スズメみたいな外見のモズ。
宮本武蔵の墨画に描かれたり、「百舌鳥(もず)」という地名が存在したり、モズは昔から人間と深い関わりがありました。
モズとはどのような鳥なのでしょうか。
モズの生態などの特徴、鳴き声、モズが行う早贄について見ていきます。
モズってどんな野鳥?
モズは、スズメ目モズ科に属する留鳥です。
全長は20cmほどで、九州より北の地域の畑や公園、林や草原などに生息しており、身近な野鳥として知られています。
また、北日本に生息しているモズは冬になると南下する習性があります。
モズは漢字では「百舌」または「百舌鳥」と書きます。
「舌」というのは「ものまね」のことです。
「百の舌がある(ものまねが出来る)鳥」という名は伊達ではなく、他の種類の鳥の鳴き声をそっくりに真似することが出来ます。
そのレパートリーは、メジロ、ウグイス、コジュケイなどで、まさに「鳥界のものまねスター」と呼ぶに相応しいでしょう。
なお、メジロやウグイスに関しては、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
非常に器用なモズですが、ものまねには理由があるのでしょうか。
モズのものまねのレパートリーであるメジロなどは、モズよりも弱い鳥です。
一説では、これらの鳥の鳴き声をそっくりに真似ることによりおびき寄せ、捕捉しているとも言われていますが、実際にはよく分かっていないようです。
モズの生態は?
モズは体が小さくて一見可愛く見えますが、肉食性の鳥です。
昆虫、トカゲ、鳥、ミミズ、小型の哺乳類などを食べています。
モズはくちばしが特徴的で、くちばしの先が下に曲がって鋭く尖っています。
まるで、タカのくちばしのようです。
これは、捕捉した鳥や小動物の肉を引き裂いたりするのに適しています。
モズは、木の上などの高いところから地上にいる標的に襲いかかり、再び木の上に戻ってから捕食する習性があります。
この姿から「小さなハンター」と呼んでも過言ではないでしょう。
「小さなハンター」と言うべきモズですが、ちょっとうっかりしているところもあるようで、カッコウに托卵されてしまうこともあるようです。
ただし、必ずしもちゃっかりと托卵が成功する訳ではなく、モズに托卵がバレてしまうことがあります。
その場合、カッコウの卵や雛は追い出されたり殺されてしまいますので、カッコウも一か八かの可能性にかけて托卵しているようです。
自然界の厳しい生存をかけた駆け引きを垣間見た気がします。
余談ですが、カッコウの托卵は誰でも良い訳ではなく、「自分が雛だったときに育ててくれた種類の鳥」のもとに托卵を行うそうです。
ですので、モズに托卵したカッコウはモズに育てられた過去があるということです。
カッコウは本来の親の顔を知りませんので、本能的に育ててくれた種類の鳥に頼るのかも知れませんね。
モズの鳴き声は?
モズの鳴き声は「キーキーキチキチ」や「ジュンジュン」などです。
なお、モズは秋になると「高鳴き」をするようになります。
これは他の鳥に自分の縄張りを宣言する行動で、オスもメスも行います。
というのも、モズは秋から冬の間は単独生活を行っているから。
オスもメスも縄張りを守るために必死なのです。
ちなみに、前述したメジロなどのものまねを行うのはこの高鳴きの季節、それもよく晴れた晴天の日がほとんどです。
常に他の種類の鳥のものまねをしている訳ではないようですね。
モズの早贄(はやにえ)とは?
モズの仲間の最大の特徴が「早贄(はやにえ)」を行うことです。
「早贄」とは、捉えた獲物を木の股やトゲなどに刺しておく行動のことです。
中には、有刺鉄線に早贄をしていることも。
早贄するのは、ヒミズ、アメリカザリガニ、カナヘビ、オオマシコなど、哺乳類、爬虫類、鳥類など様々です。
まるでホラー映画に出てくる、生け贄を捧げる儀式のようですね。
なお、イギリスでは「屠殺人の鳥」、ドイツでは「絞め殺す天使」と呼ばれてきました。
穏やかではないあだ名ですね…。
モズが早贄(はやにえ)をする理由や意味とは?
モズの最大の特徴・早贄。
一体何のために行われているのでしょうか?
結論からいうと、モズが何のために早贄をしているのか分かっていません。
早贄に関しては様々な説が出ていますので、一例を紹介します。
・モズはタカなどとは違い足の力が弱いため、獲物を固定しにくい。
早贄をしてそのため早贄をして固定している。
・モズは空腹でも満腹でも獲物がいたらとりあえず襲う習性がある。襲った獲物を刺しておき食べるが、余ったものはそのまま放置してしまう。
・早贄した獲物を後で食べることがあるため、非常食としての役割がある。
・縄張りを主張するために行われている。
ちなみに、自分で餌を確保する必要のない餌付けされたモズも早贄を行います。
獲物を押さえ付ける目的なのか、食べ残しなのか、非常食なのか、縄張りアピールなのか…。
モズの早贄に関する謎は深まるばかりです。
まとめ
モズの生態などの特徴、鳴き声、早贄について見てきました。
モズは漢字では「百舌」または「百舌鳥」と書きますが、モズがものまねが得意だったことからそう書かれるようになったようです。
また、可愛らしい見た目から想像出来ませんが、空腹でも満腹でも獲物がいたらとりあえず襲うという猟奇的な一面もあるようですね。
その影響か、江戸時代ではモズは不幸を招く「凶鳥」とされ、「モズが鳴くと死者が出る」とまで言われていました。
もちろん人間の生き死にとモズは関係ありませんが、カッコウとの知られざる関係や未だに分からない早贄の謎など、モズにはミステリアスな部分がありますね。
だからこそ、人間はモズから目が離せないのかも知れません。