野鳥を観察しようと思ったら山などに行かないといけませんが、市街地など身近なところで観察出来る野鳥がいます。
その野鳥の名前は、スズメ。
スズメは昔話「舌切り雀」や小林一茶の俳句など、古くから様々な作品のモチーフになってきました。
市街地でも観察出来ることから身近な野鳥の代表格でありますが、そのスズメが最近減少してきているとか…。
何故そのようなことが起こっているのでしょうか?
そして、これは日本だけで起こっていることなのでしょうか。
世界的に見ても、スズメは減少しているのでしょうか。
スズメが減少している原因について見ていきます。
目次
スズメが減少している?
そもそも、何故スズメは減少してしまったのでしょうか。
スズメの減少には以下のような原因が考えられています。
・住宅環境の変化
・コンバインの普及
・カラスなどによる捕食
それぞれ見ていきます。
住宅環境の変化
高度経済成長の頃、いわゆる「ニュータウン」と呼ばれる新たな住宅地が各地で作られるようになりました。
ニュータウンが作られたのは、かつて山だった場所などで、そこに住んでいたスズメなどの野鳥は住みかを追われることになりました。
それに加え、かつては木造の住宅が多かったですが、耐震性や耐久性の高さから鉄筋コンクリートなどの新しい素材を使って住宅が作られるようになりました。
その結果、住宅の気密性が高くなり、住宅のわずかな隙間に巣を作っていたスズメが巣を作る隙がなくなり、減少したのではないかと考えられています。
コンバインの普及
秋になると新米が実りますね。
日本人にとって米は切っても切れない主食であり、新米は特に美味しいため、新米の季節を楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。
ですが、田んぼに稲を植えただけでは米は食べられないですよね。
米が食卓に上がるまでは、実った稲を刈り取らないとなりませんが、かつては一家総出で数日かけて取りかからないとならない重労働でした。
それを解消するために導入されたのが「コンバイン」です。
コンバインは稲や麦などの作物を収穫するために使われる農業機械ですが、コンバインが導入されたおかげで、1日で実った新米を刈り取れるようになりました。
農業を営む人たちには救世主となったコンバインですが、スズメたちにとってはありがたくない一面もあります。
秋から冬にかけては農作物が少なくなり、エサとなるミミズなどの生き物も少なくなります。
それを補う貴重な栄養源が稲でしたが、コンバインは1日で稲を刈り取ってしまうため、スズメが稲を食べる機会がおのずと少なくなってしまうからです。
その結果、十分な栄養を摂れなくなり数が減少してしまったのではないでしょうか。
カラスなどによる捕食
ライオンやワシのように自然界の頂点に君臨する強い立場の生き物がいる一方で、それらの生き物に捕食されてしまう弱い立場の生き物がいます。
スズメは弱い立場の生き物で、カラスなどとも生活圏も被るため、どうしてもカラスなどの天敵に捕食されてしまう機会が多くなってします。
スズメは年に2回から3回くらい子育てをしますが、生んだ卵のすべてが無事に孵化したり巣立つ確率はとても低く、途中でカラスなどに襲われたり親が死んでしまったために雛が育たなかったり、何らかの事情で親鳥が育児放棄してしまうこともあります。
そのため、子育てが多い割りには巣立つ雛の割合が少なく、数が減少していると思われているのではないでしょうか。
世界でのスズメの減少
スズメは日本固有の鳥というイメージがありますが、実は西はポルトガル・東は日本までとユーラシア大陸に広く分布しています。
中でも、英国はここ数十年でスズメが9割も減少してしまったといいます。
一体何故このような事態が起こっているのでしょうか。
考えられる要因として、英国も日本と同じように「住宅環境の変化」が挙げられます。
日本のスズメと同じように、英国のスズメも家の隙間などに巣を作ります。
さらに、ヨーロッパ圏の住宅には煙突や暖炉があることが多く、そこにスズメのエサとなる木の実や虫が引っ掛かることがありました。
しかし、煙突や暖炉を掃除するのはなかなか骨の折れる作業で、それ故に煙突や暖炉を取り外したり埋めてしまう住宅やそもそも煙突や暖炉を設置しない住宅も増えてきました。
人間は煙突や暖炉の掃除をしなくて楽になりましたが、そのとばっちりが来たのがスズメで、エサが十分に確保出来ずに数が減少してしまったのではないでしょうか。
伝染病で減少しているという噂
スズメについて検索していると「スズメ 伝染病」という穏やかではない言葉が出てきます。
これは、スズメの間で伝染病が蔓延しているということでしょうか。
もし、そのような伝染病が蔓延しているとすれば、人間にも影響があるのでしょうか。
鳥の伝染病として一番に頭によぎるのは「鳥インフルエンザ」だと思いますが、鳥インフルエンザは人間には感染しないとされています。
しかし、スズメだけではなくサルモネラ菌のように人間にも感染するものもあり、素手でスズメや糞などを触ったりしない方が賢明でしょう。
なお、サルモネラ菌に感染したスズメが大量に死亡した事例もあるため、伝染病でスズメが減少しているのもあながち間違いとは言えないでしょうが、それでも絶滅が危惧されるほどではないようです。
スズメの減少がもたらす農家への影響とは?
スズメはせっかく実った稲を食べてしまう害鳥としての一面もありますが、稲が成長するまでの間に稲に近付こうとする虫を食べてくれる益鳥としての一面もあります。
稲や野菜などの農作物は、放置していればあっという間に虫などに食べられてしまったり病気にかかって農作物自体がダメになってしまいます。
それを防ぐために農薬などを散布することがありますが、高濃度の農薬は人間に影響が出るおそれがあるため、農薬などが散布された農作物を敬遠する農家や消費者もいます。
無農薬・低農薬で育てた農作物はどうしても虫が寄り付きやすく、出荷までの手間がかかります。
そのときにスズメが虫を食べてくれると、手間が省かれて農家の人も助かります。
また、手間がかかるということは、それだけ農作物の値段も高くなり、市場価格の混乱を招く可能性があり、特定の農作物が「庶民には手が出せない高嶺の花」になってしまうかも…。
一見私たちの生活に関係なさそうなスズメの減少ですが、知らず知らずのうちに影響が出でくる可能性があるということを頭の片隅に置いておいた方が良いかも知れないですね。
スズメが絶滅危惧種になる?
地球上にはかつてありふれた存在でしたが、乱獲や環境破壊などの原因で絶滅したり絶滅が危ぶまれている生き物がたくさん存在しています。
いつの日かスズメもこのように絶滅が危惧される存在になってしまうのでしょうか。
絶滅危惧種に指定されるためには、生息数や目撃数が減少しているなどの条件が必要です。
数が減少したとはいえ、スズメは街中などで容易に目撃することが出来ます。
したがって、現時点ではスズメが絶滅危惧種に指定されたり、絶滅を懸念する必要はありません。
絶滅危惧種に指定されてしまう日が来ないことを切に願います。
まとめ
スズメが減少している原因について見てきました。
スズメの減少には、日本を含めた世界各地の人間の住宅環境の変化やカラスなどによる捕食などの要因が絡んでいるようです。
また、スズメの糞などから伝染病が発生し、大量に死亡した事例もあります。
数が減少しても絶滅が危惧されるほどではないため、今すぐにスズメが観察出来なくなるという訳ではなさそうです。
しかし、この先がどうなるかは誰にも分からないため、本当にスズメの絶滅が危惧される日が来る可能性だって捨てきれません。
スズメには、いつまでも「身近な野鳥」として存在していてほしいですね。