ミステリークレイフィッシュ

2020年、ザリガニがペットとして飼えなくなる、というニュースが瞬く間に広がっています。
ザリガニは子どもの頃に、川や田んぼで捕まえてきては飼っていたという人も多いのではないでしょうか。

そんな私たちの身近な生き物の一つでもあるザリガニですが、なぜ飼育ができなくなってしまうと言われているのでしょうか。
今回はザリガニがなぜ飼えなくなってしまうのか、その理由と詳細について詳しくご紹介します。

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特定外来生物に指定されてしまった

2020年に開催された環境省自然環境局による特定外来生物等専門家会合において、外来種のザリガニが特定外来生物に指定されてしまいました。

これにより、外国産のザリガニというザリガニすべてが、今後日本では販売、飼育、譲渡が禁止され、これを許可なく破った場合には、懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金が科されるようになりました。

特定外来生物に指定される2020年の11月以降、外来種のザリガニのほぼすべてが、販売されなくなり、飼育する事もできなくなってしまいます。

すべてのザリガニが飼えなくなるわけではない

ザリガニが飼育禁止になるといっても、すべてのザリガニが飼えなくなるわけではありません。
一部のザリガニはこれまで通り普通に飼うことができます。

飼えなくなるザリガニは「外来種のザリガニ」に限定されています。
日本にはもちろん古来から生息している在来種のニホンザリガニがいますが、ニホンザリガニは全く問題なくこれまで通り捕獲したり飼育する事が可能です。
またアメリカザリガニは外来種のザリガニですが、今回は特別に除外されることになり、飼育はこれまで通り可能となっています。

外来種のザリガニが特定外来種に指定された理由

なぜ今回外来種のザリガニが特定外来生物にしていされてしまったのでしょうか。
その主な理由は以下の2つです。

・ミステリークレイフィッシュの脅威

・ザリガニペストによる在来種への影響の懸念

ミステリークレイフィッシュとは?

ミステリークレイフィッシュとは、ドイツで突然変異により誕生した新種のザリガニです。
現在はペット用のザリガニとして広く流通しています。価格も安く、一匹100円から1000円程度で入手が可能な手軽さと、放っておいても勝手に増えるという面白さからも人気が高いザリガニです。

このミステリークレイフィッシュは普通の一般的なザリガニとは決定的に違うところがあります。それは、ミステリークレイフィッシュにはメスしかおらず、オスがいなくても単為生殖でどんどん繁殖することができるというものです。
この単為生殖ができるザリガニは世界でもこのミステリークレイフィッシュただ一種のみということで、誕生した際には研究者たちを大いに驚かせたと言われています。

このミステリークレイフィッシュはヨーロッパにおいて野生化が深刻な問題となっており、マダガスカルでは既に爆発的に増えてしまい特に問題視されているのです。

日本でも数か所で野生化したミステリークレイフィッシュが発見されていて、既に野に放たれたミステリークレイフィッシュが増えているのではという懸念がなされています。

また日本に帰化してしまっているアメリカザリガニと同じアメリカザリガニ科のザリガニということもあり、アメリカザリガニとよく似た姿をしているため、見逃してしまっていて発見が遅れる可能性もあるということです。

ミステリークレイフィッシュは産まれてから成熟するまでおよそ250日で、成熟してからは多くて2か月に一度のペースで大量の卵を産みます。

一匹のミステリークレイフィッシュがいるだけで繁殖してしまいますから、想像するだけでいかに速いスピードで増えていくのかが分かります。

ミステリークレイフィッシュの爆発的な繁殖力により、日本の在来種であるニホンザリガニが絶滅に追いやられたり、生態系を破壊するリスクもとても高くなるわけですね。

なお、ミステリークレイフィッシュに関しては、以下の記事でも詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

特定外来生物のミステリークレイフィッシュとは?飼育禁止になる?

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ザリガニペストの脅威

外来種のザリガニが特定外来生物に指定されてしまったもうひとつの理由としては、ザリガニペストへの警戒が挙げられます。

ザリガニペストはカビの一種なのですが、外来の菌であり、これが蔓延すると日本在来種のニホンザリガニに対してとても脅威的であるという懸念がされています。

外国産ザリガニは一般的にこのザリガニペストに対して耐性があるためザリガニペストを保有しており、外国産のザリガニが野生化してしまうことでニホンザリガニが死滅してしまう可能性も充分に考えられるのです。

実際にヨーロッパにおいても、アメリカザリガニ科のいくつかのザリガニがザリガニペストを蔓延させていて、既にヨーロッパ在来のザリガニに壊滅的な影響を及ぼしているのです。

アメリカザリガニが例外になる理由

日本で一般的に見かける、赤い大きなザリガニのアメリカザリガニは、その昔に食用として外国から持ち込まれたウシガエルの餌にするために、ウシガエルと一緒に日本へやってきた外来種のザリガニです。

しかしウシガエルが食用として定着することはなかたっために、アメリカザリガニは野に放たれるようになってしまいました。その後野生化したアメリカザリガニは、現在まで爆発的に数を増やし、私たちの最も身近なザリガニとして親しまれるようになっていったのです。

外来種のザリガニが特定外来生物に指定されるのに、なぜアメリカザリガニだけが除外されているのでしょうか。

その理由は「規制のために今後新たに放流されてしまった場合に、生態系への影響が極めて大きいと予測されたため」です。

現在、アメリカザリガニを飼育している人や、保有している業者も多く存在します。それらの一部が規制によってアメリカザリガニを一斉に遺棄、放流してしまう可能性が出てきます。こうなるとさすがに生態系への多大な影響と、社会的な混乱を引き起こすと懸念されているんです。

今回は特定外来生物からは除外されましたが、単なる見送りであり、本来指定されなければいけない種である事は間違いないので、今後いつ指定されてもおかしくない状況であることは間違いないですね。

特定外来生物の飼育の継続は可能

2020年11月以降に、新たに外来種のザリガニを飼育する事は不可能です。しかし特定外来生物に指定されてしまう以前から飼育していた個体に関しては、特別に自治体に飼育許可の申請をして許可された個体に関してのみ、これまで通り飼育継続が可能となります。
実際には「逸走防止措置」と「繁殖防止措置」を行ったうえで、指示された通りに書類を作って提出すれば良いです。

しかしこの書類の作成と申請がかなり面倒くさいと評判でして、申請するのが面倒だから逃がしてしまう、といった人たちが出てきてしまう大きな原因ともなっています。
今回アメリカザリガニが指定から除外されたのも頷けますね。
申請書の作成の手順に関しては、環境省より新たな情報が出ると思いますので、環境省のサイトもチェックしてみてください。

環境省ウェブサイト