砂漠に住んでいる動物と言えば「ラクダ」ですよね。
ラクダの最大の特徴は、なんといっても背中の「コブ」です。
砂漠のような過酷な環境でも生きていく事ができる、独特な生態を持っている動物です。
そんなラクダですが、コブにはいったい何が入っているのでしょうか。
また、「ラクダは口から胃袋を出す」なんてとんでもない事まで言われているようですが、本当なのでしょうか。
今回はラクダのコブの秘密や、生態について詳しく調べてまとめてみました。
目次
ラクダのコブには水が入っている!?
よく言われている事の一つに、「ラクダのコブには実は水が入っており、水分不足にならないような体のつくりになっている」というもの。
しかしこれは間違った解釈なのです。
確かにラクダは背中のコブのお陰で、長い間何も食べなくても絶食状態に耐えうる体を持っていると言えます。
なんと一週間から10日もの長い間、何も飲み食いしなくても、動き続けることができるのだとか。
たっぷりと水分補給、栄養補給した後のラクダだと、なんと1か月も飲み食いなしで生きることができるというのだから驚きです。
しかし入っているのは水ではありません。
コブの正体は「脂肪」なのです。
食べものが得られない場合、ラクダはコブの脂肪を少しずつ分解、消費しながらエネルギーに変えているのです。
コブの重さは、ヒトコブラクダの場合は20㎏~50㎏くらいのコブを一つ持ち、フタコブラクダは20㎏~30㎏ずつ2つのコブを持っています。
いくらコブに脂肪が蓄えられているとはいえ、いつかはなくなります。
実際に長い間何も食べられない期間が続くと、次第にコブは小さく、平べったくなっていき、ふにゃふにゃになっていくようです。
ちなみにラクダのコブは触ると硬そうな印象がありますが、脂肪ですので実際には柔らかいのです。
コブは生まれつきあるわけではない
ラクダのコブは生まれつきあるのでしょうか。
ラクダは食べ物を食べて、栄養を脂肪に変えてコブとして蓄積していきます。
ですので生まれたての子供のラクダにはコブはないのです。
生後2週間~20日くらいから徐々に脂肪が蓄えられ始め、一か月くらい経つとコブが膨らみ始めます。
完全に大人のラクダのようなコブになるまでには、およそ1年程度かかると言われています。
ラクダは口から胃袋を出す!?
ラクダは時折、口から得体の知れない物体を出していることがあります。
オスのラクダが発情期など、興奮している時にピンク色の袋のようなものを出すのです。
まるでフーセンガムのようにも見えるこの物体ですが、「胃袋を出している」と言われていることがあるようですね。
しかしこの物体は胃袋ではありません。
これは「口蓋」というもので、喉の奥の柔らかい組織なんだとか。
これを見せつけてメスにアピールしているのですね。
しかし一体何のアピールになるのでしょうか。
気持ち悪いとしか思えないような気も・・
脂肪をわざわざコブにして蓄えている理由とは?
脂肪を体の一部に蓄えているという動物は他にもいます。
有名なものでは「ヒョウモントカゲモドキ」ですね。
「レオパ」と呼ばれているトカゲのような、ヤモリの一種なのですが、しっぽの先がふっくらと膨れており、ここに脂肪を蓄えるという特徴を持っています。
ヒョウモントカゲモドキに関しては、以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。
背中にコブを作ることにより、断熱材のような役割を果たしてくれるので、太陽の熱の影響を受けにくいと言われているのです。
また体全体に脂肪を蓄えるよりも、体の一ヵ所に脂肪を蓄えることにより、熱を逃がしやすくしているとも言われています。
灼熱の砂漠に生きるために、合理的な体のつくりになっているわけですね。
ラクダの体には、コブ以外にも砂漠で生きるための体の仕組みが色々とあります。
ラクダの鼻の仕組み
ラクダの鼻の穴は、砂を吸い込まないように閉じることができる仕組みになっています。
また鼻の穴を閉じることによって、砂を吸い込みにくくするだけでなく、一度吸い込んだ空気と共に取り込んだ水分を外に逃がさないようにもできるのです。
普通なら吐く息とともに水分がいくらか出て行ってしまいますが、ラクダの場合は息を吐く時に水分を奪われにくいというわけですね。
ラクダのおしっこはとても濃い!?
おしっこをすると体内の水分がなくなりますよね?
ラクダの場合はおしっこにも体内の水分を逃がしにくい秘密があります。
私たちに比べて、ラクダのおしっこの濃度はかなり高いのです。
少ない量のおしっこで体内の不純物を出すことができるわけですから、少量の水分を失うだけで済むのです。
ラクダは水を貯めこむこともできる
ラクダはどれくらいの量の水を貯めこむことができるのでしょうか。
実はなんと100リットルもの量の水を一気に飲む事ができると言われています。
1リットルのペットボトル100本分と考えると、結構恐ろしいものがありますよね。
また逆に、失っても良い水の量も半端ないです。
ラクダは体内の水分の半分近くの量を失っても生存が可能だと言われています。
人間なら脱水症状では済まないですよね。
ラクダと人間の関わり
ラクダは数千年前から家畜として飼われてきたと言われています。
砂漠を超えることのできる、唯一の乗り物だったわけですから頷けます。
時速60㎞のスピードで走ることができ、200㎏の荷物を積むことができるのですから、大変貴重な家畜だったに違いありません。
また食用にも利用されていますし、皮や毛は衣服に利用され、糞は燃料として利用されてきたようですね。
まさに人間の生活には欠かせない、大切な資源として扱われてきた歴史があるのです。
ラクダの生息数
現在野生のラクダは数が減ってしまっているようです。
フタコブラクダの野生種は世界でわずか1000頭ほどしか生息していません。
絶滅危惧種にも指定されている状況にあるのです。
ヒトコブラクダに関しては、野生種は既に絶滅してしまっていると言われています。
現在では家畜として生息しているのみですが、オーストラリアでは家畜として持ち込まれたヒトコブラクダが繁殖し、他の家畜の農場を踏み荒らすために駆除の対象になっているという問題にもなっています。
オーストラリアではなんと70万頭ものヒトコブラクダが繁殖しているようですよ。
ラクダは日本でも見ることが出来る?
ラクダは日本の動物園でも普通に見る事ができますし、有名な鳥取砂丘でも飼育個体をみることができます。
鳥取砂丘では実際にラクダに乗ることができるみたいですよ。
砂漠以外では生きていけない?
ラクダは砂漠のような過酷な環境下で生息していけるように進化してきました。
しかしそのため、肥沃な土地では逆に生きていきにくい体でもあると言えるのです。
もちろん生きていけないというわけではありませんが、砂漠のような環境の方がラクダにとっては暮らしやすい場所である、ということですね。
まとめ
ラクダのコブの中に入っているのは水ではなく、「脂肪」です。
何も食べられない時期が続くと、少しずつ脂肪をエネルギーに変えて生き延びることができるのです。
また時折、口から出している物体は胃袋ではなく、「口蓋」と呼ばれる喉の奥の柔らかい組織です。
繁殖期などで興奮しているオスが出すことが多いようですね。
普段何気なく見ている「ラクダのコブ」。
コブの大きい小さいで、そのラクダの栄養状態が分かるので、一度じっくり見てみるのも面白いかもしれませんね。