糞虫と呼ばれている虫がいます。
「糞虫」と見ると、なんて酷い名前なんだと思う人もいるかもしれませんね。
読んで字のごとく、動物の糞を餌とする虫たちの総称なのですが、その中でも特に有名な虫が「フンコロガシ」と呼ばれている虫ですね。
糞を転がすという珍しい習性を持っている為、観察していると可愛らしいものがあります。
そんなフンコロガシですが、実はすごい能力を持っているのをご存知でしょうか。
今回はフンコロガシの生態や、意外な能力についてもご紹介していきたいと思います。
フンコロガシとは?
フンコロガシはコガネムシ科に属しており、あのカブトムシもコガネムシ科の昆虫になります。
両者は同じ仲間なのですね。
実際に糞を食す虫はたくさん存在しますが、糞を転がすという面白い習性を持っているのは一部の種類の糞虫に限ります。
日本にもダイコクコガネやセンチコガネといった糞虫がいますが、いずれも糞は転がしません。
マメダルマコガネという虫は糞を転がす習性をもっていますが、有名なフンコロガシとはまた違う種類の虫です。
糞虫=フンコロガシではないという事ですね。
一般的にフンコロガシと呼ばれているものは、アフリカなどに生息している「スカラベ」という昆虫ですね。
映画ハムナプトラにも登場したスカラベですが、映画のスカラベはクワガタのようなアゴを持った架空のスカラベですので、実際のスカラベとは全く異なります。
フランスの昆虫学者ファーブルが研究対象にしていたことでも有名なスカラベですが、日本ではフンコロガシやタマオシコガネという名前で紹介されています。
フンコロガシは、動物の糞の臭いを嗅ぎつけて飛んできます。
そして前脚のギザギザの部分をノコギリのように器用に使い、糞を切り分けて後足で丸い形に成形していきます。
とても器用な虫なんですね。
糞が満足のいく大きさになったら、逆立ちをするように後ろ足で糞を転がして運ぶのです。
なぜ糞を転がすの?
フンコロガシが糞を転がすのには、いくつか理由があるようですね。
一つ目は「安全な場所で確実に食事をするため」です。
その場所ですぐに食べても良いのですが、糞にはたくさんの糞虫が集まって来てすぐに争奪戦になってしまいます。
糞にはもともと栄養がありませんから、大量の糞を食べる必要があるのです。
確実に食糧を得るためには、糞を持っていく必要があったんですね。
しかし中には酷いフンコロガシもいて、転がしているフンコロガシの糞を奪うものもいるのだそうですね。
運んだから安全というわけではないようです。
もう一つは、「繁殖のため」です。
生き物にはたくさんの求愛のサインがありますが、フンコロガシの糞を転がすという行為が求愛になっているのだとか。
オスが転がす糞にメスが寄ってきます。
求愛がOKの場合はメスが糞の上に乗り、オスが巣を作れそうな場所を探します。
良さそうな場所が見つかると、オスは巣穴を掘り、そこで交尾をします。
オスはすぐにいなくなってしまうのですが、メスは糞の中に卵を産みつけます。
約2か月後に卵が孵化し、幼虫は親虫が用意してくれた糞を餌として成長していきます。
約一年後かけて幼虫は成虫となり、巣穴から外へ出てきます。
フンコロガシの意外なすごい能力とは?
フンコロガシは糞を転がす際に、まっすぐに進むという特徴があります。
しかしなぜ、巨大な糞を転がしながらまっすぐに進むことができるのでしょうか。
この謎は今までなかなか解明されていませんでした。
しかしスウェーデンの大学の研究チームが、ついにその謎を解き明かすことに成功しました。
なんとフンコロガシは「天の川の光を目印にして進む方向を決めている」のだとか。
虫が星空を見て目印にして進むとは、なかなか面白いですよね。
研究チームはこの事を突き止めるためにプラネタリウムを使用した実験をしました。
実験によれば、疑似的に天の川を投影すれば、道に迷わずにまっすぐ進めたものの、一部の明るい星を残して天の川を消してみたところ、まっすぐに進むことができずに回り道を何度もしてしまった、という事です。
またフンコロガシの凄いところは、「記憶力」とも呼べるべき能力です。
フンコロガシが糞を転がす前に、糞の上に登ってグルグル回る行動をします。
実はこれ、空の星の位置を確認して脳内に焼き付けているのだとか。
いわばスナップショットのようなものですよね。
この時に記憶した星の位置を確認しながらまっすぐに迷わずに進むことができるというわけです。
ですので、実験中に糞を運んでいる途中で星の位置を変えてみたり、星を消してみても全く問題なくまっすぐに進めたという結果が出ています、
つまり最初に確認した星の位置が大事だという事が分ったんです。
ちなみに、空が曇っていてはっきりした星の位置が分からず、うまくスナップショットを取れなかった場合には、やはり道に迷ってしまうようです。
まとめ
フンコロガシと呼ばれているのは、一般的にはスカラベという糞虫の一種で、日本には生息していません。
糞虫はたくさん存在しますが、すべてが糞を転がす習性を持っているというわけではありません。
糞を転がする理由は「安全に、確実に餌を食べるため」、「繁殖のため」です。
巨大な糞を転がしながらもまっすぐに進めるのは、「天の川の光を確認しながら進んでいるため」です。
昆虫でありながら星をみて進むフンコロガシ。
なんだかロマンチックだとは思いませんか?