
ミノムシという虫をご存知でしょうか。
特に秋冬にかけてよく見かける虫で、子どもの頃によく見たという記憶がある人も多い事だと思います。
そんなミノムシですが、いったいどういう虫なのでしょうか。
今回は謎が多いミノムシについて、その生態や特徴について詳しく調べてまとめてみました。
ミノムシとは?
ミノムシとは、簡単に言うと「ミノガ」と呼ばれている「蛾」の事です。
日本には現在約15種類のミノガの仲間が生息しており、少し変わった生態を持っていると言います。
この中で最も有名なのは、「オオミノガ」という種類のミノムシではないでしょうか。
ミノムシが成虫になるとミノガになる?
一般的な知識で、ミノムシは蛾の幼虫であり、成長して成虫になると蛾になる、という認識がされていることがほとんどですよね?
しかしそれは半分が正解で、半分は違うとも言えます。
ミノムシは確かに成長すれば、ミノガという蛾になって飛んでいきますが、すべてのミノムシがそうであるわけではないのです。
ミノガという「蛾」の姿に変わって飛んでいくのはミノガの「雄」のみであり、「雌」は蛾の姿にはならず、飛ぶこともできません。
成長した雌の姿はまさにイモムシそのもので、蛾とは似ても似つかないものがあります。
雌は当然のことながら、一生蓑から出ることはなく、蓑の中で過ごします。
また、成長したミノガには雄雌ともに口が退化しており、餌を摂ることはありません。
餌を食べるのはミノムシである幼虫の期間だけ、ということになるのです。
ですので、ミノムシというのは、雄が蛾であるミノガになるまでの幼虫と雌の幼虫、そして羽化した後のミノガの雌のことを指す、という事になりますね。
ミノムシ(ミノガ)の交尾
ミノムシが成長してミノガになると、雄は交尾のためだけに飛び回り、雌が放つフェロモンを頼りにメスがいる蓑を探し出します。
雌はずっと蓑の中にいますから、雄が来るのをただひたすらに待つというわけですね。
雄が雌の入っている蓑を見つけると、すぐに交尾を行い、雄は交尾が終わるとわずか数日で死んでしまいます。
雄が成虫の蛾になるのは、交尾をするためだけ、という事ですね。
一方メスの方は、交尾後すぐに卵を蓑の中に産み付け、その後もしばらくは生きていますが、卵が孵化する20日以内のうちには死んでしまいます。
死んだ雌は干からびて、蓑の底の穴から落ちていきます。
なんとも儚い一生ですよね。
ミノムシの幼虫
幼虫は卵から孵化した後、糸を吐いて蓑にぶら下がり、風に揺られながら他の木や枝に移っていきます。
移った先の新しい枝の葉っぱなどを食べながら、その枝を材料にして新しい蓑を作ってその中で徐々に成長していきます。
幼虫の特徴として、蓑に使う材料は身の回りにあるものをしようしますので、幼虫の周りに色のついた折り紙を細かくちぎって入れておくと、カラフルな奇麗な蓑を作ったりして面白いものがあります。
自由研究などの題材にしてみても、面白いかもしれませんよ。
ミノムシが絶滅危惧種になっている!?
昔はどこにでも見られたミノムシですが、近年ではその姿を見かけることが少なくなってきた、という声があります。
確かにミノムシは1990年代後半から数を減らしており、絶滅危惧種にも指定されているという事ですが、原因は何なのでしょうか。
実はミノムシの減少には「オオミノガヤドリバエ」という寄生蠅の発生が原因になっているようです。
オオミノガヤドリバエは元々は中国に生息しているハエなのですが、中国では害虫とされているミノムシの駆除のために使用されていると言います。
これが日本に上陸し、広まっていき、国内のミノムシが寄生蠅によって駆逐されていったのです。
現在オオミノガヤドリバエによるミノムシへの被害は、ハエが寒さに弱いという特徴から、関東以南の地域で収まっているようですが、ミノムシの個体数減少の危機の原因がなくなったわけではありません。
ちなみにオオミノガヤドリバエが寄生する方法としては、ミノムシの体に卵を産みつける、というものではなく、ミノムシが食べる葉っぱなどに卵を産みつけます。
これを食べたミノムシの体内で孵化し、ミノムシの体を食い荒らしてしまうという、ミノムシにしてみれば恐ろしい虫なのです。
外来生物の侵入による生態系の破壊は、ミノムシだけではありません。
ハブ退治のために輸入されたマングースによる、国内固有種の動物への影響などもあります。
ミノムシなどの小さな虫の世界であっても、こうした問題は起こっているという事ですね。
まとめ
いかがでしょうか。
ミノムシは一概に「ミノガの幼虫である」と断言することはできず、ミノガの幼虫か、羽化した雌であるという事になります。
雄も雌も儚い命であり、ともに交尾をして産卵をすれば死んでしまいます。
またミノムシは関東以南で数を減らしており、原因は中国から侵入してきたオオミノガヤドリバエによる寄生被害によるものです。
小さく目立たないミノムシですが、このまま絶滅してしまうのはさすがに寂しいものがありますので、どうにか危機を乗り越えて欲しいと切に願います。