食虫植物の中でも有名で人気の高いウツボカズラ。
ハエトリソウと共に、食虫植物の中ではよく知られている種類かと思います。
そんなウツボカズラですが、どれくらいの種類があるのかご存知でしょうか。
また餌となる虫を捕まえるための仕組みはどのようなものなのでしょうか。
今回はそんなウツボカズラの種類や育て方、捕虫の仕組みなどをご紹介していこうと思います。
目次
ウツボカズラの分布
ウツボカズラは東南アジアなどの熱帯雨林に分布しており、特にボルネオ島には世界中のウツボカズラの3割を超える種類が密生していると言われています。
ウツボカズラの種類と名称
ウツボカズラという名前はウツボカズラ属に含まれている一種を指す名前であるとともに、一般的にはウツボカズラ属の総称を指すことが多いです。
世界には約70種類もの野生のウツボカズラが自生していると言われており、現在では園芸店でも様々なタイプのウツボカズラが作り出されています。
様々な色や形、大きさが存在するウツボカズラは、観賞用の植物としても人気が高く、愛好家たちはもちろん、一般の家庭においても親しまれています。
「ウツボ」というのは本来「矢」を入れていくための「靭(うつぼ)」からきており、「カズラ」というのはツル状の植物の事を指します。
ウツボカズラもツル状の植物の一種ということになりますね。
ウツボカズラの捕虫葉
ウツボカズラのツボは「捕虫葉(ほちゅうよう)」と呼ばれており、よく見ると葉っぱの先が変化したものであることが分かります。
この捕虫葉はウツボカズラの種類によって大きさや形が異なっており、ウツボカズラの魅力の一つでもあります。
この捕虫葉から分泌される「甘い香りのする蜜」に誘われて、アリをはじめとする様々な昆虫がおびき寄せられます。
そして滑りやすくなっている捕虫葉の上で足を滑らせてしまい、袋の中に落ちてしまう、という方法で捕虫します。
袋に落ちてしまった虫は、仲に入っている消化液で徐々に消化され、栄養源にされてしまうのです。
しかし中には別の方法で捕虫する種類もいます。
例えば捕虫葉にフタがついていて、フタの裏から甘い蜜を出します。
そこに集まった虫を雨水が当たる衝撃を利用してツボの中に落とす、という方法を用いるものがいるのです。
他には、最大のウツボカズラだと40㎝もの大きな捕虫葉をもっていますが、このサイズになると虫を捕まえる他にも面白い方法で栄養を摂ります。
それは「小動物をおびき寄せる」というもの。
ボルネオ島にはツパイなどの小動物が生息しており、これらの小動物もまたウツボカズラの甘い香りに引き寄せられます。
しかしさすがに小動物を食べるということはしません。
目当ては小動物の出す「おしっこ」です。
おしっこにはウツボカズラが生きていくために必要な栄養がたっぷりと含まれているため、貴重なんだそうです。
他には、他の植物の「落ち葉」を好物とするウツボカズラも存在するとの事。
こういった種類のウツボカズラの袋の入り口は、落ち葉が入りやすいように大きく開いているのも特徴的です。
食虫植物といっても、何も餌となるのは虫だけじゃない、ということですね。
ウツボカズラの消化液は飲める!?
まだフタが開く前のウツボカズラの消化液は、人間が飲んでも差し支えないと言われています。
実際に、探検家たちにとってはウツボカズラの消化液は貴重な水分として飲まれてきた、という話があるのです。
まぁでも、飲んでみたいとは思いませんよね(笑)
他にも、ウツボカズラの中に米を入れて炊くと、美味しく炊きあがるという話もあります。
実際に、現地ではそういった料理がお祝い事の際に振る舞われているそうですよ。
ウツボカズラが食虫する理由とは?
ウツボカズラが食虫しなければいけないのにはちゃんと理由があります。
ウツボカズラが自生している地域の土壌には栄養が少なく、植物が生きていくには不利な環境なんです。
そのため、そこで細々と生きている木々はみな細く、他の熱帯雨林の木々と比べてもその違いは一目瞭然です。
そんな栄養が得られにくい環境でも生きていけるように、虫を捕らえて栄養にする独自の進化を遂げてきたというわけです。
ウツボカズラと共存するアリがいる
なんと本来餌となるはずのアリですが、ウツボカズラの茎に巣を作り、そこで暮らしているアリがいるんです。
そのアリはなんとウツボカズラの消化液の中で巧みに泳ぐことができ、ウツボカズラの袋に落ちてきた他の虫たちを餌としているほか、ウツボカズラの栄養を奪って成長するボウフラをも食べてくれるので、とても有難い存在なのだとか。
変わったもの同士、過酷な環境であってもうまく共存しているという事ですね。
ウツボカズラの育て方
置き場所と温度
ウツボカズラは熱帯雨林の植物ですので、多くの種類は「高温多湿」を好みます。
またこれも一部の種類を除いてですが、寒さには大変弱いという特徴があります。
日本の厳しい冬には耐えられませんので、20℃を下回るくらいに寒くなってきたら屋内に移動して管理しなければなりません。
また乾燥しないように霧吹きを利用して湿度を上げておくのも忘れずに。
直射日光は必要ではありませんが、カーテン越しのような感じで日光にしっかり当てて置ける場所というのも重要なポイントとなります。
土
ウツボカズラの特徴として、根が弱いというものがあります。
ですので土を利用するよりも、「水苔」を利用する方が根にやさしく、保水性や通気性に優れておりとても有効です。
水やり
ハエトリソウのように湿地に自生しているような植物ではないので、腰水はしないようにしましょう。
土や水苔が乾いていたら霧吹きをする程度で、乾いていなければ給水は必要ありません。
また30℃を超えるような蒸し暑い時期には、真昼間に給水をすれば蒸れてしまい、枯れる要因となってしまいますので、涼しい夕方か早朝に行うようにしましょう。
餌やり
食虫植物ですから、餌をあげたくなる気持ちも良く分かります。
ですが、基本的にウツボカズラには餌は必要ありません。
植物ですので光合成さえしかりと出来ていれば、生きていく事は可能なんです。
時折餌を与えてみるのも良いですが、与えすぎると栄養の過剰摂取になってしまい、枯れる要因となってしまいますので注意しましょう。
ウツボカズラの捕虫葉が出来ないのはなぜ!?
ウツボカズラを育てている人の声で良くあるのは、「捕虫葉がなかなか育たない」というものがあります。
捕虫葉はそもそも、足りない栄養を捕虫することで補うためのもの。
栄養が足りていれば捕虫葉を作る必要はないのです。
つまり、肥料などを与えている場合には捕虫葉はできにくくなります。
また、捕虫葉が育つ前の葉っぱを触ってしまうと、袋ができない要因ともなるようです。
捕虫葉を作らせるには、
・しっかりと日光に当てる
・湿度を維持した環境で育てる
・むやみに捕虫葉の元となる葉っぱを触らない
という事が重要なポイントとなります。
またせっかく出来た捕虫葉が枯れてしまう要因にも、温度が低すぎる、湿度が低いなどがあります。
また虫を故意に入れると枯れてしまう、という事例もありますので、むやみに餌を与えない方が観賞用としては長く楽しめるのではないかと思います。
植え替え
元気な状態で育て続けるには、定期的な植え替えが必要です。
植え替えの時期は「5月~6月」の時期が最も適しています。
この際に傷んだ根は取り除くようにしてください。
ウツボカズラの増やし方
ウツボカズラはいろんな方法で増やすことができます。
一般的な増やし方は、「株分け」、「挿し木」、「葉挿し」などがあります。
もっとも簡単でおススメなのは「株分け」をする方法です。
その際にも弱い根っこに注意を払い、水苔でやさしく包んであげると良いでしょう。
まとめ
ウツボカズラは基本的に高温多湿を好む食虫植物です。
種類によって生育環境は異なりますが、私たちが一般的に入手できるウツボカズラは概ねそういった種類が多いです。
ウツボカズラを育てるには、土よりも水苔を利用する方が簡単でおススメですので試してみて下さい。
また、元気に育て続けるためにもむやみに餌や肥料を与えない、という事が重要なポイントとなります。
増やし方も簡単ですが、根っこがとても弱いという特徴を持っていますので、植え替えや株分けの際には優しく取り扱いましょう。
その他の食虫植物
その他の食虫植物で有名なものでは「ハエトリソウ(ハエトリグサ)」があります。
ハエトリソウに関しては、以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。